1.股関節鏡手術との出会い

1-1 ドイツ留学のときに股関節鏡手術を初めて拝見する(百聞は一見にしかず)。

 

股関節鏡を用いた手術を初めてみたのは、ドイツ留学をした2009年のときでした。ドイツ留学の先は、アーヘン工科大学(医工学分野の一つコンピュータ支援外科に力を入れていた研究室)であったので、通常“臨床”が見られる状況ではありませんでした。当然、留学する前にそういった機会があればお願いしたいと尋ねたところ、「大丈夫。いろんな医師とコラボレーションしているから」とはいわれたものの、半年以上そんな機会もなく過ぎていきました。

そんな折、ホスト先で開催されたミーティングに共同研究者として参加されていた、ドレスレン大学の整形外科教授グンター先生とお話する機会がありました。現状を伝えますと、“よかったら手術見学にしに来るかい”、というようなお誘いを受け、すぐさま見学にいったのでした。

 数日訪問しただけですが、その期間でも手術がびっちり朝から組まれていました。人工股関節全置換術、表面置換型人工股関節手術、骨盤骨きり術(PAO)、Surgical Dislocationなど盛りだくさんの中に含まれていたのが、股関節鏡手術でした。実は前方からアプローチをして、オープンで股関節を展開した後、牽引で脱臼させて、そこに関節鏡をいれるというオーソドックスではないものでした(でもその日帰宅して調べると、すでに論文も出していて、治療効果についても良好である、とまとめられていました。)小さいスペースから、スコープを動かすことで直視とは異なる広い範囲で病変を確認し、処置(主にはデブリードメント)をする、という手術でしたが、自分にとってはとても意義あるものでした。

 当時は、Femoro-Acetabular Impingement FAI という病気の概念が、股関節外科医の名医 Ganzによって提唱されてまだ五年程度の時期であり、日本では、本当にそんなものあるのかな?という先生も多かった時でした。そんな中、外国では、確かにそういう患者がいる、すでに手術治療体制が整っているということがわかり、留学をすることの意義を再認識したのでした。